道歌、狂歌、狂句、
    俳句、川柳、里謡、俚諺、歌物語



   
  これ、僕の描いたお母さんの絵だよ。
     この目、いつも僕のことを じっと見ていてくれるんだ。
     この耳、僕の言うこと何でも聞いてくれるんだぜ。
     だけど、我が侭は聞こえません、だって。
     僕、人に言われるんだ。「あなた、お母さんにそっくりね。」って。
     僕、心も似るといいんだがなぁ、と いつも思ってるんだよ。

             (今日を生き抜く知恵〜松原泰道・孫引き )
  



   
道 歌

    
仰ぎ見る 富士の高嶺のそれよりも 高きは親の恵みなりけり

    憂きことは 世に降るほどの習いぞと  思いも知らで何嘆くらん


    きつぱりと 埒のあきたる世の中の  埒のあけぬは迷いなりけり

    正直の 胸のうちこそ浄土なれ  仏もあれば極楽もある

    
たのしみは  朝起き出でて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時

    耐え忍ぶ 心しなくば誰もみな 欲と怒りに身をば保たじ

    何事も 満ちれば欠ける世の中の 月を我が身の慎みに見よ
    
    喉もとを 過ぎて暑さを忘れはて  恩を恩とも知らぬ世の中

    掃けば散り 掃えばまたも塵積もる  人の心も庭の落ち葉も
    
    花咲くは 実のなるためぞ花にのみ 心やつして実をば忘るな

    人のこと 我に向かいて言う人は さこそ我がこと人に言うらん
    
    負けて引く 人を弱しと思うなよ 知恵の力の強い故なり

    身を削り 人をば救う擂粉木の この味知れる人ぞ尊き
    
    善き人を 見れば我が身も磨かれて 鏡に向かう心地こそすれ

    欲ふかき 人の心と降る雪は  積もるにつけて道を忘れる
    
    世の中に 我が物とては無かりけり 身をさえ土に返すべければ

    世の中は 月に群雲 花に風 思うに別れ思わぬに会う
    

 
狂 歌
  
 
    元日は 冥土の旅の一里塚 目出度もあり目出度も無し

    にっこりと 山も笑って今朝はまた きげんよしのの春は来にけり
    
    元の身の 毛虫忘るな今は名を 揚羽の蝶の高く飛ぶとも

    宵寝朝寝 昼寝ものぐさ物忘れ それこそよけれ世にたらぬ身は
    
    世の中は 左様しからば御もっとも そうでござるか確と存ぜぬ

    わがままに 育てあげたる深草は 野守りが手にもあましものなり
    
    嘘の種 うそは互いの不和の種 楽は苦の種苦は楽の種 


 


     
 重荷でも 運と言う字は「はこぶ」の意

     子煩悩 小判持たせて後で泣き

     濁るほど 底の見えるは人心

     寝返りを するぞ脇よれキリギリス

     身の船と 知れや心の舵しだい


     

   俳 句
     
   
 雨風の 恩を染め出す 紅葉かな

    一もって 百の味あり 初茄子
   
    梅一輪 一輪ほどの 暖かさ

    親のいう 事はみなよし 年の暮れ
   
    顔の汗  子が拭いてやる  田植えかな

    元日や この心にて 世にいたし

    気に入らぬ 風もあろうに 柳かな

    ここかしこ 親鳥のなく 焼野かな
   
    下がるほど 人の見上げる 藤の花

    精出せば 氷る間もなし 水車

    出来秋や 一年ぶりの 笑い顔
    
    のどやかな 願うことなき 初詣

    波風は 立てど仲良し 友千鳥
    
    働きは 後に知らるる 案山子かな
    
    古犬が 先に立つなり 墓参り


    
  
川 柳  

    陰徳は 積めよ闇夜に かおる梅 
    
    親の汗 子が拭いてやる 田植えかな
    
    金よりも 子に譲りたい 知恵袋

    孝行を  したい時分に  親はなし

    孝行も したが不幸も もっとした
    
    殺しても  罪にはならぬ  腹の虫

    四季ともに 蒔いてよいのが 善の種

    商人は 損と元値で 蔵を立て
    
    叩かれず 寝た子の顔の 蚊の憎さ
   
    忠死でも 吉良の家来の名は知らず

    年の暮れ 互いにこすき銭使い

    呑み込んで みれば意見も 苦くなく

    裸にて 生まれてきたに 何不足

    人を皆 人と思うて 腹が立ち

    世の中を 知らぬ証拠に 腹を立て

    立志伝  汗と運との 八分二分

  
 
 里 謡
     
    朝日輝く海より広い 心もちたい持たせたい

    一度位の一度が大事 一度が奈落の分かれ道
   
    いとし可愛い子旅させ親よ 憂いも辛いも旅で知る

    苦労する身は何いとわねど 苦労しがいの有るように
   
    四十五十は鼻たれ小僧 男盛りは七八十

    墨と硯は仲良いけれど 水をさされりゃあ薄くなる
   
    どうにもならぬと知ってる無理が どうにかしたいと焦る愚痴

    泣くも一生 笑うも一生 ならば笑って暮らしたい
   
    花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ

    富士の雪さえ解けるというに 心ひとつが解きかねる
   
    丸い卵も切りようで四角 ものも言いようで角が立つ

    笑う眼元の剣もあれば 怒る眼元の慈悲もある

      
 
 俚 諺
   
    あきらめは 心の養生

    悪しき教えは 学び易し
   
    悪友の笑顔より 善友の怒り顔

    いまはの念仏誰も唱える

    老いの木登り 年寄りの冷や水

    禍福は 糾える縄の如し
   
    幸運に用心 不運に忍耐

    酒 腹に入れば  知恵頭を出る

    仕事を見て その人を知る
   
    自然、日光、気分は三大医師

    自慢傲慢 ケチ欲張り 馬鹿のうち
   
    節倹は 一大収入   

    足ることを知ることは 第一の富
   
    道理ほど 強き味方なし

    読書は夜道の案内者
   
    女房とお天道様は 気が付かぬところに有り難味がある

    貧乏・ 不足は 最良の師匠
   
    坊主の怠慢 医者の傲慢 馬鹿のうち

    人は 善悪の友による
   
    楽は苦の種 苦は楽の種

    良薬口に苦く 忠言耳に逆らう
   
    両方きいて 下知を為せ

    病なおりて 医者を忘れる
   

  古今時世(俳句・和歌)

    今はただ何を思はん憂きことも 楽しきことも見果てつる身ぞ( 松平定信 )

    今よりは 故郷の空にすむ月を いざや眺めて遊びあかさん ( 為永春水 )

    
裏を見せ 表を見せて 散る紅葉( 良寛 )

    
浮世の月 見過ごしにけり 末二年( 井原西鶴 )

    
    
親思う 心に勝る親ごころ 今日のおとずれ何と聞くらん( 吉田松蔭 )

    越し方は一夜ばかりの心地して 八十路あまりの夢を見しかな( 貝原益軒
)

    たらいから たらいに移る ちんぷんかん( 小林一茶 )
    

  
  
歌物語
   
   
  
 私はウメボシ

    二月三月花盛り。ウグイス鳴いた春の日の、楽しい時も夢の内
   
    五月六月実がなれば、枝からふるい落とされて
    近所の街へ運ばれて、何升何合の量り売り
   
    もとより酸っぱいこの身体、塩に染まってからくなり
    シソに染まって赤くなる

    七月八月暑い頃、三日三晩の土用干し
    思えば辛いことばかり、それも世のため人のため
   
    シワはよっても若い気で、小さな君らの仲間入り
    運動会にもついて行く、まして戦のその時はなくてはならぬこの私

  
 
 セールス とんび
   
    額に汗して作ったものは、涼しい気持ちで売らねばならん
    涙を流して作ったものは、笑顔でもって売るものさ

    元気を出しなよ、セールスとんび
   
    眼下に広がるこの街で
    大きな心で、何度も何度も舞ってみな


 
 お蔭さん

    旨い魚は漁師のお陰、新鮮野菜は農家のお陰
    味付け上手は板長のお陰、空腹一膳あなたのお陰
    お店造りは匠のお陰、繁盛するのは御客のお陰
    初心忘れずもてなすお陰、毎日元気は彼方のお陰
    どれもこれも元をたどれば、みんなみんな天地のお陰 
 
  

   
   
子のために祈る詩 ( 嘉悦 孝子 )
    
    
わが子よ 健やかに生ひ立てよかし 
    遊びに耽って怪我ばしするな 不養生して病になるな
    日に伸び日に肥え いとも丈夫に育つこそ
    先ず第一の願いなれ


    
わが子よ 誠実なる心を得よかし
    悪しき塵に汚れず 醜き流れに染まず
    差し昇る旭のごとく さわやかに真直ぐなる心ほど
    世にも尊きものはあらじ


    
わが子よ 磨かずば玉にも光はそはず
    師の教えに従いて 学びの道を励み
    己が天分を発揮して 独立自立の人とならんこそ
    行く末かけての願いなれ


    
わが子よ 旅は道ずれ世は情け
    同情心のある人となれよ 親兄弟や他人にも
    優しき心を失うな 助け合いつつ進むこそ
    人の行くべき道ぞかし



   
 
冬が来た ( 高村 光太郎 )

    
っぱりと 冬が来た 
     八つ手の白い花も消え 公孫樹の木も箒になった
    きりきりと もみ込むやうな冬が来た 
     人にいやがられる冬 草木に背かれ虫類に逃げられる冬が来た
    冬よ僕に来い 僕に来い 僕は冬の力 冬は僕の餌食だ
     しみ透れ つきぬけ 雪で埋めろ

    
刃物のやうな冬が来た



     嵐が吹こうと、吹雪が来ようと、
     天に黒雲、地に争いが絶えなかろうと、
     「勇気を失うな、唇に歌を持て、心に太陽を持て。」
          ( フライシュレン〜心に太陽を持て、山本有三 )


          
      


         挨拶も、礼儀作法も、お洒落も、清潔にするのも・・・、
       スーッや、靴や、ベルトや、ネクタイをするのも・・・、
       髪やヒゲを綺麗に整え、服装や言葉を整えるのも・・・、
       人に不快感を与えない、自分も快く楽しくするするためです。